国立高専の理科の入試問題は、特殊で難しいイメージを持っている中学生が多いですが、全ての問題が特殊で難しいわけではありません。理科の入試問題の傾向を把握し、適切な対策を行なった上で立ち向かえば、十分に高得点を狙うことができます。
また、国立高専の入試は、令和4年度(2022年度)入試から思考力・判断力・表現力をより重視した作成方針へ移行されましたが、理科の入試問題には以前から資料等を利用した思考力等を測れるよう工夫した問題が出されており、入試傾向にそれほど大きな変化はありませんでした。そのため、令和4年度より前の過去問を使った対策は、これまで同様、非常に効果的です。
ここでは、高専の理科の入試問題を攻略するために必要な、把握すべき出題傾向や対策方法について紹介していきます。
目次
高専入試理科の出題傾向
高専入試理科の問題構成
国立高専の理科の入試問題は、ここ数年、大問6題で構成されており、問題数は多めです。
大問1が小問集合、大問2〜5は生物・地学・化学・物理の各分野から1題ずつ出題されています。また、大問6は分野をまたがる融合問題が出題されています。
高専入試理科の頻出分野・問題
高専入試の理科は、大問1の小問集合では各分野から満遍なく出題され、大問2〜5では、以下の分野の問題が頻出です。
- 生物:植物の体の仕組み、ヒトの体、遺伝、生態系
- 地学:天体、火山、地震
- 物理:力と圧力、光と音、電流、運動とエネルギー
- 化学:酸化還元、イオン、酸とアルカリ
また、融合問題では、生物、地学、物理、化学のうち3〜4分野をくみ合わせて出題されています。
また、図や表、グラフなどの資料が多用されており、資料から必要な情報を読み取って、その情報と自分の知識を組み合わせて答えを導き出す問題が多いです。
高専入試理科の配点
高専入試における理科の傾斜配点
高専では、教科ごとの配点が異なる傾斜配点を採用している学校がありますが、特に理科は他の教科に対して配点を高くしている高専が多いです。
理科の配点が2倍の高専
- 苫小牧工業高等専門学校(北海道)
- 函館工業高等専門学校(北海道)
- 旭川工業高等専門学校(北海道)
- 釧路工業高等専門学校(北海道)
- 仙台工業高等専門学校(宮城県)
- 長岡工業高等専門学校(新潟県)
- 長野工業高等専門学校(長野県)
- 津山工業高等専門学校(岡山県)
- 徳山工業高等専門学校(山口県)
- 阿南工業高等専門学校(徳島県)
- 新居浜工業高等専門学校(愛媛県)
- 沖縄工業高等専門学校(沖縄県)
理科の配点が1.5倍の高専
- 茨城工業高等専門学校(茨城県)
- 群馬工業高等専門学校(群馬県)
- 沼津工業高等専門学校(静岡県)
- 鈴鹿工業高等専門学校(三重県)
- 大阪公立大学工業高等専門学校(大阪府)
- 神戸工業高等専門学校(兵庫県)
- 久留米工業高等専門学校(福岡県)
- 熊本高等専門学校(熊本県)
高専入試の理科の問題配点
配点は、大問1が計16〜19点、大問2〜5はそれぞれ15点前後、大問6は20点前後の配点です。問題数が多くかつ各分野に満遍なく割り振られているため、大問1の小問集合で全問正解するとともに、得点しやすい問題と難しい問題の取捨選択をスピーディに行って得点を積み重ねる必要があります。
高専入試理科の実際の問題例
高専入試の理科で実際に出題された問題を紹介します。
以下の問題は、令和4年度入試の理科(本試験)の大問2です。
重曹を使った実験に関する化学の問題で、発生する気体の収集と、頻出の酸とアルカリ、イオンに関する出題です。図や表、グラフが多用されており、問題文と資料から必要情報を読み取るとともに、問題の意図を汲み取って答えを導き出す必要があります。
もう1題紹介しましょう。
以下の問題は、令和5年度入試の理科(本試験)の大問6です。
こちらは高専理科の大問6に固定で出題されている融合問題です。問1、2は生物、問3、4は地学、問5は物理、問6は化学の分野の問題です。設問自体が融合問題になっているのではなく、大問の中で扱われる1つのテーマについて、各分野の設問が出題される形式です。資料から必要な情報を読み取り、どの分野の問題なのかを冷静に分析できれば、設問自体の難易度はそれほど高くありませんので、十分に対応可能です。
高専入試理科の公立高校との出題傾向の違い
高専と公立高校理科の出題内容の違い
高専入試と公立高校入試の理科で出題範囲に違いはなく、地学・物理・化学の各分野から満遍なく出題されます。また、知識問題と計算問題からバランスよく出題されています。
一方で、高専の理科では、図表、グラフなどの資料が多く扱われ、大問6では各分野の融合問題が出題されており、公立高校との違いと言えるでしょう。
高専と公立高校理科の難易度の違い
高専の理科について、難問ばかりが出題されるようなイメージを持たれている生徒さんや保護者の方もいらっしゃいますが、実は一部複雑であったり高専特有の問題が出題されるものの、小問集合を含め学校の教科書レベルの出題が多くを占めています。ただし、問題数が多く処理速度が求められるため、全問解答の難易度が高く、かつ図表やグラフのスピーディな読み取りが必要であり、その点では公立高校に比べて難易度が高いといえます。
とはいえ、特別なひらめきや発想が必要な問題ではなく、問題文や与えられた資料を正確に読み取り、出題意図を汲み取って自分が持っている知識と組み合わせて処理することができれば十分対応可能です。
高専入試理科の対策方法
高専入試理科の対策スケジュール
1年開始
中学1年生から高専入試理科の対策を行う場合は、まず学校授業で進めている内容について抜け漏れが出ないように完璧に仕上げていきましょう。授業毎に復習し、テスト勉強でも教科書やワークレベルの問題はすらすら解ける状態にすることに取り組んでいってください。
その上で説明や解説が充実した教材や動画付き教材で中学3年間の範囲について基本内容の予習を行うことをお勧めします。つまり高専入試理科の出題範囲の全体学習を行います。完璧に理解し、解けるようにするのが理想的ですが、まずは内容の理解をすることから始めていきましょう。
2年開始
中学2年生から対策を行う場合は、まず中1の学習内容の復習から始めていきましょう。教科書やワークの基本問題を解き進めていって、知識や解き方を忘れている箇所を見つけたら、教科書で思い出し→演習で解けるようにする、の繰り返しで進めていきましょう。
ここまでできたら、次は中学3年間の範囲について、基本内容の予習を進めていきましょう。
3年開始
中学3年生から行う場合は、中学3年間の範囲について、受験用の総復習教材を進めてみましょう。いきなり受験レベルの問題集に入る必要はありません。既習範囲については問題をすらすら解けるレベル、未習範囲については内容の理解、問題の解き方の理解をすることを重視して進めてください。
学校で習ってからでないと進めにくいという意見もありますが、高専の入試理科は問題数が多く難易度が高い問題もあり、傾斜配点で1.5倍から2倍換算されるところもありますので、早い段階で出題範囲全体の予習も含めて、受験対策を進めていきましょう。
高専ならではの理科対策
国立高専の理科の入試問題は、問題数が多いため、知識問題で答えられるだけでなく、反射的に即答できるレベルに仕上げましょう。また、知識問題だけではなく、大問1の小問集合で出てくるシンプルな計算問題の解法も即答できるように仕上げることが必須です。
また、図表やグラフの読み取りが非常に多いため、学習内容に関連する範囲の教科書の図表等を見て説明する練習が効果的です。資料の読み取りに慣れておきましょう。
さらに、高専入試の理科では、各分野から満遍なく出題されるため、苦手分野を作らないことも必須です。苦手分野や抜け漏れのない知識、解法知識を身につけていきましょう。苦手分野を得意分野にまでするのは時間がかかりますが、基本問題を即答できるレベルには仕上げましょう。大問6の融合問題でも各分野の問題が出題されますので、分野を横断して関連する内容について意識して取り組むと良いでしょう。
また、高専の理科で頻出である以下の単元の対策は重点的に行うことが必須です。
- 生物:植物の体の仕組み、ヒトの体、遺伝、生態系
- 地学:天体、火山、地震
- 物理:力と圧力、光と音、電流、運動とエネルギー
- 化学:酸化還元、イオン、酸とアルカリ
過去問を使った高専理科対策
過去問を使った理科対策の方法は以下の通りです。
過去問は「傾向の把握と分析」「演習」「復習」の段階に分けて取り組んでいきましょう。
高専の入試、理科では、大問2〜5は大問ごとに分野が分かれており、後半の難易度が高めで、大問1が小問集合、大問6が融合問題と決まっています。現在の自分の力で解ける、解ける可能性がある問題はどれか、得意な分野の大問はどれか、逆に太刀打ちできない問題はどの大問のどの設問なのか、問題や構成の傾向把握、分析を行いましょう。
その上で、自分が得点しないといけない問題、時間をかけて良い問題、見直しをしてから取り組む問題に分けて、どの問題を優先して解答するのか、どの問題まで解答できる様に時間を使うのか、といった試験戦略を立てておくことが大切です。高専によって必要な得点は異なります。自分が理科でどのくらいの得点を取らないといけないのかを明確にして、合格するために、どのレベルの問題まで解かないといけないのか、解ける問題をどのくらいの時間で解き切らないといけないのか、しっかりと整理しておきましょう。
試験時間は50分ですので、全問解くことを目指す場合、解答時間の目安は、大問1:10分、大問2〜6:各8分、見直し時間:残り時間として微調整すると良いでしょう。
演習では、立てた試験戦略に沿って時間を測って過去問を解いていきましょう。解いた後は、必ず解答の答え合わせ、見直しを行うとともに、試験戦略の微調整が必要かどうか検討しましょう。どの様に時間配分をしていたらよかったか、見直し時間の取り方や見直す問題が適切だったかなど、振り返りを行うことで試験戦略をブラッシュアップして、今の実力で取れる点数を最大化させましょう。
復習では、基本的に演習と同様ですが、ある程度問題内容を把握できている状態でしたら、解答時間を30〜40分程度に設定して練習してみても良いでしょう。
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