高専受験対策のための勉強法

高専合格で目指せる進学と就職

高専合格で目指せる進学と就職

高専卒業生の進路には、主に企業への就職、大学への編入学、高専の専攻科への進学があります。高専の受験を考えている中学生は、高専に入学して何をしたいかも大切ですが、その先にどんな進路を見据えて高専受験に取り組むのかを明確にすることで、より高いモチベーションを維持することができます。

ここでは、高専卒業生の各進路のメリットやデメリット、主な進学先や就職先、就職率など、高専の受験を考えている受験生の今後の進路の参考になる情報について紹介します。

高専卒業後はどんな進路がある?

高専卒業後はどんな進路がある?

高専卒業後の主な進路としては、企業への就職、大学3年次への編入学、高専の専攻科への進学が挙げられます。

高専卒業後、そのまま企業へ就職する卒業生が多いです。大学卒と同じ条件で採用する企業もあります。

また、高専は5年制ですので、卒業時には準学士の課程を修了し、短期大学卒業と同等、大学2年の終了と同じタイミングとなります。ここから、大学3年次への編入学をして卒業、高専の専攻科へ進学して卒業すると、学士課程を修了することができます。そこからさらに大学院の修士課程、博士課程に進むことも可能です。

高専の進路の割合

高専の進路の割合

高専卒業生の進路の割合は、例年、就職が約6割、進学が約4割となっています。

令和5年度の進路状況では、就職が57%、進学が40%でした。進学のうち、大学編入が25%、高専の専攻科への進学が15%となっています。

これは、国立高専の卒業生全体の割合で、就職の割合が多くなっていますが、高専によっては、就職より進学の割合の方が多いこともあります。

高専から企業への就職

高専卒業生の約6割が企業への就職を選んでいるのですが、特筆すべきはその就職率です。高専から企業への就職についてみていきましょう。

高専生の就職率と求人動向

高専生の就職率と求人動向

国立高専の卒業生の就職率は、上のグラフのように99%前後で推移しており、多くの高専で就職率100%を打ち出しています。高専の受験を考え始めた生徒であれば、高専は就職率100%ということを聞いたことがあるはずです。

文部科学省・厚生労働省が実施する就職状況調査によると、国立高専の卒業生は卒業年度の10月時点で90%以上の内定率となっていることも、高専卒業生に対する企業の期待が伺えます。高専卒業生の採用条件は、大学卒と同じに設定している企業も多いようです。

また、2024年度の広報誌「国立高専機構 概要」によると、高専生に対する求人倍率は20倍を超えるとされています。大学卒・大学院卒の求人倍率が2倍以下ですので、高専生に対する求人倍率の高さには驚かされます。

高専生が活躍できる業界と職種

産業別就職者数(令和 5 年度本科卒業者)

産業人数(人)
製造業2,365
情報通信業756
建設業530
電気・ガス・熱供給・水道業356
学術研究、専門・技術サービス業310
運輸業、郵便業276
公務(他に分類されるものを除く)163
サービス業(他に分類されないもの)150
卸売業、小売業78
不動産業、物品賃貸業45
金融業、保険業17
教育、学習支援業9
鉱業、採石業、砂利採取業8
生活関連サービス業、娯楽業6
農業、林業4
医療、福祉3
複合サービス事業3
宿泊業、飲食サービス業1
漁業0
その他13
合計5,093
(令和6年5月1日現在)

引用:https://www.kosen-k.go.jp/company/joho_kouhou

高専の卒業生は、特に産業界において、技術者や研究者として、研究開発・生産管理・生産現場等の各部門で活躍しています。実践的な技術を活かした職種に就いている卒業生が多いです。

産業別では、「製造業」が圧倒的に多く、半数近くを占めています。次いで、「情報通信業」「建設業」「電気・ガス・熱供給・水道業」「学術研究、専門・技術サービス業」といった各学科にちなんだ産業が上位に入っています。

高専生の主な就職先

主な就職先(令和 4 年度本科卒業者)

企業名
旭化成株式会社
株式会社メンバーズ
国土交通省
京セラ株式会社
株式会社FIXER
東海旅客鉄道株式会社
関西電力株式会社
ダイキン工業株式会社
中国電力ネットワーク株式会社
日東電工株式会社
キヤノンメディカルシステムズ株式会社
東京電力ホールディングス株式会社
サントリープロダクツ株式会社
ENEOS株式会社
トーテックアメニティ株式会社
中部電力株式会社
富士電機株式会社
浜松ホトニクス株式会社
大阪瓦斯株式会社
四国電力株式会社

引用元:https://www.kosen-k.go.jp/company/joho_kouhou

高専生の主な就職先としては、日本人なら誰でも一度は聞いたことがあるような企業が多くあります。高専卒業生ならこれらの企業に入れるというわけではありませんが、有名な企業への就職の道筋が先輩方によって作られていることは、高専受験、高専での学びのモチベーションになります。

高専生の就職先ランキング

順位名称
1サントリーグループ
2旭化成
3メンバーズ
4NTT東日本<エンジニア>
5日東電工
6FIXER
7国土交通省
7関西電力
9JR東海
10京セラ

引用元:https://gekkan-kosen.com/admission/8459/

高専生の就職先には、旭化成、メンバーズ、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)、関西電力、サントリー、ENEOSなどの企業が常に上位に入っています。

2023年2月入社の国立高専卒業生の就職先ランキング(月刊高専)によると、1位がサントリーグループ、2位が旭化成、3位がメンバーズとなっています。

高専から大学3年次への編入学

高専卒業生の進学の選択肢として多いのが、大学3年次への編入学です。多くの国公立大学、私立大学で高専からの編入学を受け入れており、中には、高専卒業生ために設立された国立大学も存在します。

高専からの大学編入学についてみていきましょう。

高専から大学への編入のメリットとデメリット

高専から大学への編入のメリットとデメリット

高専から大学へ編入する際はメリットとデメリットがあります。デメリットについては、編入を決めた生徒にとっては大きなものではありませんが、編入を考える上で知っておくべきポイントです。大学に編入して卒業することにより学士号を取得できますが、これは編入の本来の目的の一部であるため、以下のメリットには入れていません。

メリット

メリットの1つ目は、4年制大学の1年次入学のための試験より少ない科目数で受験可能です。多くの国立大学の場合、共通テストで6教科8科目の受験に加え、個別試験(二次試験)で2〜3科目の受験が必要です。一方、高専からの編入試験では、大学にもよりますが2〜3科目の学力試験で、面接等を実施する大学もあるものの、圧倒的に試験科目は少ないです。

メリットの2つ目は、編入試験にも指定校推薦があります。国公立大学、有名私立大学にも枠があります。高専での成績が上位約3割に入っていれば、難関大と言われるレベルに指定校推薦で編入できる可能性があります。

メリットの3つ目は、高専の所属学科と似た分野の学科に入れば、高専で取得した単位を大学のカリキュラムの単位として認定してもらうことができます。そのため、1年次入学で必要な全ての単位を取る必要はなく、高専での学習内容については単位認定されるものが多くあります。

メリットの4つ目は、高専で学んだ一般教育科目の多くが単位認定され、編入後すぐに専門教育科目の単位を多く取ることができます。高専からの編入生はより専門的な内容を学ぶ意識が高いと思います。編入後に一般科目の講義が多いともどかしいですが、自分の興味のある専門科目の学習に時間をかけられるのは魅力の一つです。

デメリット

デメリットの1つ目として挙げられるのは、編入試験では専門分野の試験が課される大学もあり、他分野の学部・学科への編入の場合、学んだことのない専門分野の出題については難易度が高く感じるでしょう。ただ、それを考慮しても、他分野の学科に編入したいと思えるのであれば、しっかりと対策して編入するのは価値があるはずです。

デメリットの2つ目に挙げられるのは、高専の所属学科と異なる分野の学科に入ると、認定される単位が少なく、大学生活が非常にハードになります。4年次に卒業研究を進めながら多くの講義を受けるのはかなり大変です。場合によっては、3年次で留年して単位を取り切るという選択も必要になる可能性があります。

編入先大学・学部の選び方

編入先大学・学部の選び方

高専から大学に編入する場合、基本的には、同分野の学部・学科から編入先を選ぶことになるでしょう。

編入先の大学・学部・学科を選ぶ際の着目ポイントとしては、まず、現在の学科との関連性が重要です。現在在籍する高専の学科と同じか似た分野を選ぶ方が、自分が学んできた内容を活かして発展的な内容を学ぶことができます。メリット、デメリットで上述したように、編入学の場合、単位認定の問題があるため、なるべく似た分野の学部・学科を選ぶ方が良いでしょう。

また、当然ですが、興味のある分野であることは必須です。現在の高専の学科に縛られすぎても本来学びたい内容から離れてしまうともったいないです。高専で学んだ中でも特に興味を持っている分野があるのであれば、所属学科と全く同じ分野でなくても、ぜひ編入先として検討してみてください。

他にも、卒研の内容との親和性も編入先の大学・学部・学科を選ぶ際の着目ポイントとなります。高専の学科で学ぶ中でもより専門的に関わるのが卒研の研究テーマです。卒研の内容との親和性にも着目して編入先を考えてみましょう。

編入試験には、併願も可能です。編入試験は大学ごとに設定されており、国公立大学でも異なる入試日程に設定されていることがあります。つまり、複数の大学で編入試験を受けることができるため、編入試験の受験日にも着目して、どの大学を受験するのか検討してみるのもいいでしょう。

編入先の大学・学部・学科を調べるときには、大学・学部のWEBサイトや研究室のWEBサイトを調べてみることをお勧めします。まずは自分が行ってみたいと思えることが重要ですので、どんなことを学べるのか、どんな研究をしているのか調べて大学や学部・学科を知ることからスタートするのがいいでしょう。

また、高専の進路相談室や教員に、現在の所属学科からの編入先の候補を聞いてみても良いです。特に高専の教授や助教授、准教授は、大学の教員と知り合いだったり、同じ分野の教員(研究者)を知っていることが多いので、参考になります。

高専卒業生の主な編入先大学

大学名人数(人)
R5
大学名人数(人)
R5
豊橋技術科学大学377立命館大学22
長岡技術科学大学329横浜国立大学22
熊本大学73広島大学22
千葉大学57佐賀大学21
九州工業大学56鹿児島大学21
東京農工大学55茨城大学20
岡山大学55岐阜大学20
九州大学48島根大学20
筑波大学45香川大学18
金沢大学41東京都市大学17
東北大学38山口大学17
大阪大学37山梨大学16
福井大学35千葉工業大学15
京都工芸繊維大学34日本大学15
宇都宮大学31東京大学15
新潟大学31東京海洋大学15
北海道大学29名古屋大学15
東京工業大学29名古屋工業大学15
信州大学29奈良女子大学14
群馬大学28北見工業大学13
神戸大学27徳島大学13
室蘭工業大学26富山大学12
電気通信大学24山形大学11
三重大学23愛媛大学11
東京都立大学23岩手大学10
(令和6年5月1日現在)

引用元:https://www.kosen-k.go.jp/company/joho_kouhou

多くの大学が高専からの編入学を受け入れています。

長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学は、主として高専卒業生のために設立された国立大学で、編入学の人数が他の大学に比べてずば抜けて多いです。両大学では、大学院も含めて高専教育と連携した教育を行っているため、他の大学への編入よりもギャップがなく編入後の学習に取り組むことができるでしょう。

主な編入先大学の表を見ると、技科大以外にも名だたる難関国立大学へ高専から編入していることがわかります。

編入後の大学生活

編入後の大学生活

編入後の大学生活は、基本的には1年次入学生と同じですが、異なる点もあります。

単位の認定数にもよりますが、1年次に入学して3年に進学した学生に比べると、多くの単位が必要なため、多くの授業を受ける必要のある編入生が多いです。授業や卒業研究については、他の生徒と同じように出席したり研究室に所属します。

部活やサークルには、1年次新入生と一緒に加入が可能です。3年次に編入するため途中参加のような形になりますが、編入生でも部活やサークルに参加する学生は多くいます。

また、高専からの編入生は一定数いるため、入学式で顔をあわせることもあり、編入生グループができやすいです。同じ高専から同じ大学に編入することもありますし、一般的に編入生を受けている大学であれば孤立するようなことはありません。

高専の専攻科への進学

高専の本科5年間の卒業後には、専攻科への進学という選択肢もあります。高専卒業生の15%が選択する進路である専攻科とはどのようなものでしょうか。

高専の専攻科とは?

高専の専攻科とは?

高専の専攻科は、本科5年間の教育からさらに知識と技術を深めるために、本科卒業後に2年間の学びを提供する教育課程です。専攻科は、全ての国立高専に設置されています。専攻科修了者は、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構に申請を行って審査に合格することにより4年制大学卒業者と同等の「学士」の学位を取得することができます。

本科には、「機械工学科」「電気工学科」「電子制御工学科」「情報工学科」「建築システム工学科」「物質工学科」などの学科がありますが、専攻科には、さらに発展的な内容や関連分野を含む複合的な「機械・電気システム工学専攻」「環境システム工学専攻」「物質工学専攻」などの専攻が用意されています。

専攻科進学のメリットとデメリット

専攻科進学のメリットとデメリット

専攻科進学のメリットの1つとして、大学への編入試験より比較的簡単な試験で進学することが挙げられます。また、同じ高専の専攻科であれば、慣れた教員から、慣れた環境の中で学べるため、外部の影響やストレスを受けづらく、学びや研究に没頭することができます。また、基本的に専攻科は同じ構内に設置されているため、通うための住環境も変えずに進学することが可能です。

学習面では、高専の本科の所属学科と親和性の高い分野を学べるのは当然のこと、本科で学んだ内容を基礎にしてカリキュラムが組まれているため、学習しやすいというのもメリットです。

さらに、同じ研究室に所属して、卒業研究の内容をほぼそのまま継続することも可能であるため、1年間の卒業研究では突き詰められなかった内容をより深く探求することができます。

専攻科卒業後の進路

専攻科卒業後の進路

専攻科卒業後の進路としては、主に企業への就職と大学院への進学があります。就職が約7割、進学が約3割で、本科卒業生と同様に就職の方が割合が多いです。

その他の進路

高専卒業生のその他の進路として、高専3年生で退学して、大学入試を受けて他の高校生と同様に大学1年次に進学する学生も稀にいます。在学中に、高専ではなく他の進路へ進むことに決める学生たちです。

また、高専を卒業してから、専門学校や異なる分野で大学1年次へ進学するケースも存在します。

高専入試対策をご希望の方へ

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この記事に関連した
よくある質問

高専卒業後はどんな進路がありますか?

高専卒業生の主な進路としては、企業への就職、大学3年次への編入学、高専の専攻科への進学があります。

高専卒業生の就職率が100%って本当?

国立高専の卒業生の就職率は、上のグラフのように99%前後で推移しており、多くの高専で就職率100%を打ち出しています。

高専卒業生はどんな企業に就職しているの?

高専の卒業生は、特に産業界において、技術者や研究者として、研究開発・生産管理・生産現場等の各部門で活躍しています。旭化成、メンバーズ、東海旅客鉄道株式会社(JR東海)、関西電力、サントリー、ENEOSなどの企業が、常に高専卒業生の就職先の上位に入っています。

高専から大学へ編入するメリット・デメリットは?

高専から大学へ編入するメリットは、1年次入学のための試験より少ない科目で受験可能であったり、編入時の単位認定などがあります。一方、デメリットは、他分野の学科への編入難易度が高い点や認定単位数が少ない点が挙げられます。

高専から編入できる大学はどこ?

高専卒業生の編入先の大学としては、高専卒業生のために設立された豊橋技科大と長岡技科大が代表的ですが、国立大学の大半、他にも多くの有名公立・私立大が編入生を受け入れています。

専攻科って何?

高専の専攻科は、本科5年間の教育からさらに知識と技術を深めるために、本科卒業後に2年間の学びを提供する教育課程で、全ての国立高専に設置されています。

高専本科から専攻科へ進学するメリットは?

専攻科へ進学するメリットは、大学への編入試験より比較的簡単な試験で進学できることや、本科で学んだ内容を発展させて慣れた環境で学べる点などが挙げられます。

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